揚羽千景/原作・松田環 『大正探偵怪奇譚 第壱巻 鬼哭』 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第1巻〉鬼哭 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第1巻〉鬼哭 (徳間デュアル文庫)

時は大正.帝都で美しい娘ばかりが失踪する連続神隠し事件が発生した.売れない探偵小説家の丑三進ノ助は捜査を開始,やがて子爵の娘の千歳と出会う.
2006 年に劇団しゅうくりー夢が上演した同名舞台のシナリオを小説化したもの.原作の第弐夜が小説の第壱巻にあたるらしい.
感想……言葉が足りない.ストーリーは整然としており分かりやすいのだけど,雰囲気作りや背景説明に費やされるテキストが少なすぎる印象を受けた.タイトルや表紙からもっとおどろおどろしいものを想像していたから,ってのもあるんだろうけど,するする進むテキストには作品/作者ならではのにおいが薄い.結果的に藤城陽のイラストに物語の雰囲気そのものが引っ張られてしまっていたように思う.忠実に再現しようとした結果上手くいかないというのはノベライズにはままあることなんだけどね.原作の舞台は見たことはないけどシナリオ自体は面白そう,ってかたぶん面白いんだろうけど,これを読んだだけでは断言しきれないのがもどかしくてもったいない.