揚羽千景/原作・松田環 『大正探偵怪奇譚 第弐巻 鬼子』 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第2巻〉鬼子 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第2巻〉鬼子 (徳間デュアル文庫)

時は京に都のある時代.夫の酒呑童子を殺された茨木とその息子の夜叉丸,地獄丸の兄弟は東国へと逃げ延びていた.そんなある日,都から来た鴉法眼と名乗る僧に戦いを挑んだ夜叉丸は怪我を負ったうえ家族とはぐれてしまう.倒れていた夜叉丸を救ったのは椿という娘だった.
劇団しゅうくりー夢による同名舞台のノベライズ第弐巻.原作では第壱夜にあたり,進ノ助と紅蜘蛛の因縁を描いている.
長所短所ともに第壱巻とほぼ同様.逃れられない鬼の宿命と因縁の悲しさ・猫又娘との出会いなど,シナリオはこちらもかなり好きだな.一方,原作では演技や演出で見せていたであろう部分が言葉足らずになっているのではないかとの印象は拭いきれない.戯曲で出してくれればまた違ったのかもしれないけど,いずれにしろもったいない気がする.
ところで小説版はこれで完結なのかな? あとがきには続きが出るとも出ないとも書いてないのだけど,重ね重ね書くようにシナリオ自体は好みなので出るなら読みたい.舞台にも興味が湧いた.「舞台でのあの空気が少しでも伝わり、劇場にお運びいただける原動力となればうれしいです」というあとがきの,少なくとも半分は(私にとって)達せられた,といったところ.