桑島由一 『パーフェクトキス』 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

パーフェクトキス (MF文庫 ダ・ヴィンチ く 2-1)

パーフェクトキス (MF文庫 ダ・ヴィンチ く 2-1)

正直な話、僕は詩人になりたかった。
小説家とか、シナリオライターじゃなくて詩人。ポエムを書いて、それを売って生活する人。詩を歌って、それで女の子にモテる人。

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2006 年の同人誌*1に掲載された短編,ケータイ小説サイトで配信した掌編,著者が 90 年代後半に Web サイトで公開していたショートストーリー.様々なメディアで発表された作品をまとめた一冊.前世紀にネットで公開していたショートストーリーも,詩人になりたいダメ男の二態を描いた近作『鍵穴ポエム01』『鍵穴ポエム02』も,すべての掌編に共通するのはポエティックで小ぎれいな青臭さ.端的に言うとイタい.でもそのイタさが楽しい.伝わるかどうか分からないんだけど,ある程度の成功を収めた知人の黒歴史ノートをうっかり読んでしまって,同じ年齢の頃の自分の黒歴史に重ねて身悶える……みたいなイタみがちくちくきた.本編の内容とは関係のない部分でメタなイタさに襲われたというか.同人誌とはいえ,そこそこ名前が売れてからもこういう「ポエム」を書けることには素直に感心する.器用な作家の空虚なお戯れポエムで片付けるのが簡単なのかもしれないけど,著者とほぼ同世代の私はちょっと違った感慨を持って読み終えたのでした.

*1:三年前の文学フリマで私が買い損ねたやつか?