野村美月 『“文学少女”見習いの、初戀。』 (ファミ通文庫)

けど、まばたきすることも忘れて見つめていた瞳の奥に、少女のように儚げな姿や、歯を必死に食いしばっている白い横顔が、鮮烈に焼きついた。
身体の芯が疼くような、皮膚がひりひりするようなこの気持ちをなんと呼べばいいのか、そのときはわからなかった。

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遠子先輩が去った日,入学予定の聖条学園にふらりと立ち寄った日坂菜乃は,井上心葉が泣き叫ぶ場にたまたま出会う.その出会いによって心葉に惹かれた菜乃は入学後に文芸部に押しかけ告白までするがすげなくされる.だが少女はくじけない.もともと本に縁のなかった菜乃は心葉に好かれるため“文学少女”になろうとする.
“文学少女”」の後日談,ってか続編? 語り手が心葉から菜乃へという大きな変化はあるけど,ストーリーのパターンはほぼ一緒かなあ.謎解きをまぶした成長譚.安定している.元気いっぱい,何があっても前向きな菜乃の一人称はすごく楽しい.こちらまで引っ張られて元気になるようなそんな.竹岡美穂のイラストも雰囲気じゅうぶんで華を添えている.多くの出会い・別れ,さまざまな経験を経てひとまわり成長した心葉……と言いたいところ,肝心なところで頼りないのはご愛嬌かなw
ってことで良かったです.しかしこれ続くのか…….「挿話集」のときも思ったけど,この上なく綺麗に完結したシリーズだけに,番外編がいくつも出るのはファンとして複雑な気分でもある.予定調和の結末しか思いつかないのだけど,それを裏切られても困るし,で.単体で読む分には面白いので素直に喜んどけばいいのかなあ.