青田八葉 『ピーチガーデン 1. キスキス・ローテーション』 (スニーカー文庫)

「見覚えのある背中だと思ったら、やっぱり隆だった! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!」
「ちょ、ちょっと待て! とにかく落ち着け!」
チンピラを相手に怒鳴っていた時よりも遥かに興奮している。
「嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! すごく嬉しいっ!」
犬養が子犬だとしたら、嬉しさのあまり粗相をしてるんじゃないかと思わせるほどの興奮っぷり。

ピーチガーデン 1.キスキス・ローテーション (角川スニーカー文庫) - はてなキーワード

告白しては振られてばかりで彼女がまったく出来ない隆.ケータイのサイトで知ったおまじないを気まぐれで試したところ,空からウサギを名乗る幼女が降ってきたのだった.隆の家に居着くことになった彼女の言うことには,「運命の恋人」が間もなく彼の前に現れるという.
第 14 回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作.「運命の恋人」候補の少女とキスをして,それから 24 時間誰ともキスをしなければその相手と永遠に結ばれることとなる,逆に言えば毎日一回,別の相手とキスすることで運命は保留される.ということでこのサブタイトル.前提の是非は置いとくとしてしかしこれ,主人公が腹を括り,ひとりを決めさえすればすぐ終わる話を,無理矢理引き延ばしているようにしか見えないのよなぁ.続けても誰も(読者も作者も)幸せになれないタイプの話だと思う.傍若無人のウサギ,お姉さん風のまかみ,感情剥き出しの犬養と,女の子たちは個性的かつ魅力的に描けているので軟着陸させようと思えば出来ないこともないと思うんだが.どうすんのかなあ.