明月千里 『月見月理解の探偵殺人』 (GA文庫)

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)

「死ぬべきだよ、れーくん。そんな間の抜けたヤツは、死んでしかるべきだ」
せせら笑いを浮かべて、僕の瞳を覗き込む。
「自ら命を断ったというのは、その証明に過ぎない。れーくん、何故恐竜は死んで、ネズミは生き残っている? 負けたからだ。人が作り上げた社会という世界で、敗北したヤツは人間やめるか、生きていちゃいけねえのさ」

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制服に似合わない中折れ帽を被り,車椅子に乗った傍若無人,傲岸不遜の女子高生・月見月理解.借金苦による自殺で父を亡くした高校生・都築初の前に唐突に現れたその自称"探偵"は,ある人間の依頼で二年前のその出来事の真犯人を暴きだすためにやってきたという.真犯人を殺すために.
ミステリ風味のゲーム小説,かな? 何年か前の西尾維新テイストの.一週間の期限の中,真犯人の裏付け捜査と,人狼をモデルにした《探偵殺人ゲーム》が並行して進んでいく.ハッタリをぷんぷん効かせた話運びと,外連味溢れる魅力たっぷりのキャラクターの活躍が,というかヒロインたる理解のいかにもな暴れっぷりが楽しい.一人称が「俺様」の女子高生車椅子探偵という記号的キャラクターを,しっかり特徴を付けて自分のものとして描いていた.ミステリと呼ぶにはかなり強引なストーリーラインも,強引さと嘘くささを分かったうえで前面に出し,武器にしている風.良かったです.本作が第 1 回 GA文庫大賞奨励賞受賞のデビュー作ということで,今後の活躍が楽しみになる一冊でした.