日日日 『うさぎさん惑星。 一周目』 （ガンガンノベルズ）

うさぎさん惑星。 一周目 (ガンガンノベルズ)

「人間は、強いからね。地球が滅びかけても、まだ生きている。環境に適応してね。君も同じだね。だから変われるね、きっとね」
チュチュ美は古くさいカセットテープを差しこんだ。
音楽が流れ始める。
正門を抜け、居住区から出発。
外へ。
「月の砂漠は渚みたいで、サザンオールスターズがぴったりだね♪」
楽しそうに、チュチュ美が歌い始めた。

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遠い未来のこと．人類は死の星となった地球から脱出し，月面に移住を果たしていた．環境変換成分〈テラフォミオン〉によってテラフォーミングされ，現在では敬愛を込めて〈うさぎさん惑星〉と呼ばれるようになった人類第二の故郷・月に住むのは，地球からの初期移住者の子孫〈月宮〉，地球に残ることを選び，あとから移住してきた〈玉宮〉，そしてウサミミの生えた先住民〈月裏〉．
三つの社会と二つの種族の暮らすようになった月面を舞台に，色々な事情を抱えつつ接近したり離れたり．不器用でふらふらする少年少女の共存の行方．月と地球，地球人と異星人，地球人と地球人の気持ち・価値観のすれ違いをポエミィにコミカルに描き出していて，わりあいとしっかりした月面ラブコメ青春群像劇に仕上がっていると思う．群れることで行き違いもたくさん生まれるけれど，私たちは寂しいと死んでしまう生き物だから，寄り添って生きていく，という．まぁ後半はいつもの日日日だったけど．イラスト＋設定資料 3 ページを冒頭部に持ってきてプロローグ代わりにするという根性に許し難い気持ちも若干ないわけではないですが，話自体は良かったです．