野村美月 『“文学少女”見習いの、傷心。』 (ファミ通文庫)

「ぼくは航海をやめない! イギリスへは帰らない! きみを追いかける!」
怪物を見送ったあと、ウォルトンがどうしたのか、『フランケンシュタイン』には書かれていない。
だから、わたしは、“想像”する!
心の翼をいっぱいに広げ、ウォルトンになって、怪物のことを考える。

DVD付特装版"文学少女"見習いの、傷心。(ファミ通文庫) - はてなキーワード

「──きみが、大嫌いだ」.菜乃に告げた心葉はその日から仮面を被ったような取り繕った態度で菜乃に接するようになる.いくらアプローチしてもさらりとかわされてしまう菜乃は,これではいけないと行動を開始する.
本編が綺麗に完結した話をいつまで続けるのかというのは置いとくとして.良かったと思う.とにかく行動的で,失敗しても常に前を向く,元気いっぱいの菜乃の一人称は屈託がなくてそれだけで素直に楽しい.何度も書いている気がしますが元気で前向きな女の子はそれだけで正義です.前シリーズの心葉の一人称とはおかげで対照的な雰囲気を持つ.いなくなった遠子先輩の行動を知らずなぞることになる菜乃が,心葉と遠子先輩の関係と,菜乃と心葉の関係の対照を更に濃くしている.しかし同時に結果の分かりきった勝負の経過を見せられている気分になるのもまた事実なわけで.まあ結末までまだまだ色々ありそうではあるけど,この本単体で見ると良いだけに複雑で落ち着かないというか.
あと,特装版同梱の『劇場版“文学少女”』(※リンク先音注意)プロモーションアニメ DVD も見た.『“文学少女”今日のおやつ〜はつ恋〜』(約 10 分)は原作とは一線を画した雰囲気.文学の面白さを料理のおいしさに喩えた原作を,ビジュアルで表現しようとすれば必然的に料理アニメっぽくなるのかな,とは思うけど,一歩踏み出したアプローチはとても面白いと思う.本をちぎるときの紙の質感がなってないとか,遠子先輩のあの座り方でパンツが見えないのはおかしいとかあるけど,おかげで劇場公開が少し待ち遠しくなりましたよ,と.