神林長平 『敵は海賊・海賊版』 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

敵は海賊・海賊版 (ハヤカワ文庫 JA 178)

「機械にそんな金をかけておきながら、どうしておれの給料は安いんだろう」
〈それはやはり、わたしのほうが重要視され、それなりの仕事をこなすからでしょう〉
「やっぱりおまえの思考回路はおかしい。交換したほうがいい」
〈どこがおかしいですか。あなたこそ、非論理的だ。配線しなおすべきです。だいたい、顔がわるい。足が短すぎる。食い意地がはってるし、自分の過ちは絶対に認めない。ラテルが気の毒だ。あーかわいそ。うーあわれ〉

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匋冥・シャローム・ツザッキイは邪悪な伝説的宇宙海賊.火星を訪れた匋冥は出会った女に「失踪した自分の星の王女を捜し出してほしい」と頼まれ行動をともにする.それを追うのは海賊課刑事ラテルとアプロのデコボココンビ.
『狐と踊れ』に収録された短編に続く「敵は海賊」シリーズの一作目.海賊たち,それを追う刑事コンビ,王女,魔女,天使,さらにはドッペルゲンガーまで現れるドタバタスペースオペラ.海賊と刑事のいる遠い時代の宇宙観.聖銃と魔銃がエネルギーを繋ぐ二つの世界の存在.CAW・システムってなんぞ.ラテルとアプロ(黒猫型宇宙人),ラジェンドラ(艦載人工知能)のユーモラスなやりとりも楽しい.私は主に「アプロ可愛い」の方向から読んだのですが,するすると読める裏に非常に沢山のものが盛り込まれており,ひとによって色んな切り口から読めそう.贅沢で不気味でとても楽しい一冊でありました.フムン.