フレッド・ホイル&ジョン・エリオット/伊藤哲訳 『アンドロメダのA』 (ハヤカワ文庫SF)

アンドロメダのA (ハヤカワ文庫SF)

アンドロメダのA (ハヤカワ文庫SF)

「数学的世界ですな」ラインハートが答えた。「電子計算機こそそれの代表でしょう」

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20 世紀後半,イギリスで建造された巨大電波望遠鏡アンドロメダ座の方角からの電波を受信した.どうやらこの電波信号はコンピュータ・プログラムであるらしいのだが,処理するだけの能力を持ったコンピュータは現状存在しない.科学者,政治家,様々な思惑が巨大コンピュータ建造をめぐり動き出す.完成したコンピュータとアンドロメダ座のプログラムから作り出されたものは.
1961 年に BBC で放映された同名のテレビドラマシリーズのノベライズ.ノベライズだからなのか,研究室やコンピュータなどのビジュアル面の描写はわりと細かい印象.人物の行動も台詞と動作がいちいちセットで書かれており,いかにもノベライズらしい泥臭さがある.こういうところはあんま変わらないのか.50 年近い昔の SF ということを思うとかえって読みやすくなっている.
中身は SF というより政治やらラブロマンスやらを絡めたこれまたいかにもテレビドラマ的なエンターテイメント.内容が詰まっているわけではないけど,時代背景やらをちゃんと分かっていない自分にはいまいち読み取れていない部分がある気もする.時事ネタは風化しやすいってことかしら.あと「数学的世界」と一口に言っても場所や時代で広範な意味を持つもんなんだな,と.