榊一郎 『ザ・ジャグル 汝と共に平和のあらんことを I』 (ハヤカワ文庫JA)

ザ・ジャグル―汝と共に平和のあらんことを〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

ザ・ジャグル―汝と共に平和のあらんことを〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

「戦争は終わりましたね……確かに」
それは無難な──薄っぺらいともいうべき模範解答だけを口にしてきたジェイドにしては奇妙に重苦しい一言だった。
「終わったように──見えますね」

ザ・ジャグル―汝と共に平和のあらんことを〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) | 榊 一郎, usi |本 | 通販 | Amazon

世界大戦終了後の復興のシンボルとして,軌道エレベーター〈グレート・ピラー〉を中心に建造された永久平和都市オフィール.豊かで穏やかな「警察も軍隊もない平和な街」として世界中に知られる都市は,その一面では未だ拭いきれない戦争の傷跡と歪みを孕んでいた.
テロや大規模犯罪を誰にも知られぬまま闇へ葬る特殊部隊〈手品師ザ・ジャグル〉の任務を中心に,「戦争」と「平和」の姿を描いたアクション小説.舞台を SF 的未来に置き換えて,ライトノベル的にキャラクターを配置した「必殺シリーズ」,といった感じ.可変型武装移動機(VAC)の暴れるアクションシーンは軽快,戦後の世界情勢などの背景も非常によくまとまっているためテンポよく読めるのだけど,作品ならではの特徴があんま見当たらないのが物足りない.導入編の一巻は〈手品師〉の現場が中心に描かれていたので大きな流れが見えにくかった,ってこともあるのかもしれないけど,今のところは小さくまとまった印象は拭えない.あと個人的な好みかもしれないけど,〈手品師〉の面々の人情味の強さに違和感があった.特に,ジョルジュのあからさまな存在をもっと上手く隠せなかったのかなぁ,と.