ジェイン・オースティン&セス・グレアム=スミス/安原和見訳 『高慢と偏見とゾンビ』 (二見文庫)

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

こんなうれしい計画はほかにない。エリザベスは大喜びで、ありがたく誘いを受けることにした。「おばさま、ほんとうにうれしいわ!」有頂天で言った。「とっても幸せ! おかげですっかり元気が出てきちゃった。もう憂鬱も不機嫌もさようならね。男の人なんか、岩や山にくらべたらなんでもないもの。山のてっぺんで何時間も組み稽古をして過ごしましょうね! 短剣と俊足だけを頼りに、何頭も牡鹿を倒すの。ああ、大地と心を通わせて、仏陀の悟りの境地に近づきたいわ!」

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)) | ジェイン・オースティン, セス・グレアム=スミス, 安原 和見 |本 | 通販 | Amazon

18 世紀末.イギリスでは死者がゾンビとしてよみがえる謎の疫病の蔓延していた.田舎町に二人の夫婦と五人の娘たちで暮らすベネット家では,娘たちは戦士としての修練を積む日々を送っていた.男の子のいないベネット家において,母であるベネット夫人は娘たちに相応しい嫁ぎ先を見つけることを何よりの生き甲斐としていた.そんなベネット家の近隣の荘園に,独身で資産家のビングリー氏とダーシー氏が訪れてくることとなった.
イギリスの古典ラブロマンス小説『高慢と偏見』にゾンビを登場させてみました.「過去の名作の文章を八割以上そのまま使い、そこにゾンビだのニンジャだのを突っ込んで新しい作品にしてしまうという」手法で書かれたマッシュアップ小説の先駆け,らしい.ゾンビが大挙乱入して阿鼻叫喚の舞踏会! 「娘たち! 死の五芒星だ!」 ゾンビたち殲滅! 戦士として育てられたためかやたら血の気が多く,気に入らない相手の首を狩ることばかり考える娘たちのほうがゾンビよりよっぽど恐いよ!
そんなふざけた小説でありながら,結婚をめぐってドタバタするストーリーはほぼそのままというのがすごい.しかもダーシーがビングリーとジェインの結婚に反対する理由だの,シャーロットがコリンズと結婚する理由だの,下手したらオリジナルより理に適っている(ように見える)のがまた面白い.ぶっちゃけ 500 ページを使った一発ギャグという感じであり読み終わってみるとなんも残らない気もするのだけれど,ギャグの破壊力は凄まじく,読んでる最中に事実何度も吹き出した.オリジナルを読んでいれば数ページに一度のペースで笑えること請け合い.皆さんも是非オリジナルとセットで読まれるといいと思うよ.日本語版の Twitter アカウントの主ゾン子さんもゆかいに頑張っておられるので Follow してみるとよいですよ.