至道流星 『神と世界と絶望人間 03-08 雷撃☆SSガール2』 (講談社BOX)

神と世界と絶望人間 03-08 雷撃☆SSガール2 (講談社BOX)

神と世界と絶望人間 03-08 雷撃☆SSガール2 (講談社BOX)

「ま、クズどもの考えていることはわからんね。連中を見ていると、リザがいう様に、いっそ世界を滅ぼした方がマシに思えてくるよ」
そう言って、青葉は冷笑してみせた。ここで青葉の言う「クズ」とか「連中」というのは、大衆やマスコミ、あるいは世の中の色んなものを総称したものだろう。これには海斗もまったく同感だった。

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陰謀に巻き込まれ殺された父の復讐のため,世界を裏から支配するブランフォートに経済で戦いを挑んだ桜井海斗と仲間たちの軌跡.ブッシュ政権誕生後の対テロ政策,イラク戦争小泉内閣フィーバー,ホリエモン逮捕…….『神と世界と絶望人間 00-02 雷撃☆SSガール2』に続き,2003 年から,リーマンショック直前の 2008 年を描く.
基本的には天才たちのイケイケドンドンのビジネス小説風サクセスストーリーの体なので,時間とともに面白いように金が儲かるさまを書いただけの話なんだけど,大衆はどうしようもないクズである,ということを繰返し繰返し描こうとする執念が凄まじい.小泉政権を支持する大衆などチンパンジーと変わらぬ.自分の見たいものしか見たがらない愚民どもは道端の石ころのようなもの.なんでホリエモンなんかがクズどもから支持されるのかさっぱり理解できない.さらに「00-02」から冴えわたる陰謀論911 は大衆を操作するための自作自演でありテロなんかであるはずがない.ミラーマン教授は真相に近づきすぎたため表舞台から消されてしまったのだ.ああ,本当のことを知ってしまった自分たちがどんなに不幸なことか! 「大衆はクズだ,資本主義は終わった,騙される前に騙せ,人間賛美なんかクソ食らえ」というスタンスがとにかく徹底している.この登場人物たちが例えば小川一水の世界に行ったとしたらまず生き残ることは出来ないだろうし,逆もまた然りだと思う.どっちが正しいのかは分からないけど.
『雷撃☆SSガール』と最終的に少しだけリンクした後,リーマンショックが起ころうかという場面で,煽るだけ煽っておきながらぷっつり話は終わる.人間も社会も信頼に値しない,クズしかいないこの絶望的な世界に救いはない,という結論でいいのかな.頭のおかしいひとに与えたら本気にしかねない迫力みたいなものはあったけど,作者がどこまで本気で「絶望」しているのか,あとがきまで読んでもやっぱりよく分からないのよな.とにかくテンションが高いので読んでる最中は楽しいんだけど,読み終わってみるとはてなと首をかしげたくなる.なんとなくスッキリしないものが残るけど,まあ作中で言われているように「庶民には、未来永劫わかるまい。」ってことかな.変な話でした.