フリッツ・ライバー/中村融編 『跳躍者の時空』 (河出書房新社)

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

跳躍者の時空 (奇想コレクション)

それは超自然にまつわる実話であるばかりか、人間についての物語でもある。けっきょく──なにはともあれ──亡霊も人間なのだから。

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SF,ホラー,ファンタジーと多彩な分野で多くの著作を遺し,今年でちょうど生誕百周年となる作者の,日本独自に編まれた短篇集.収録十篇のうち,表題作「跳躍者の時空」を含む最初の五篇は,IQ160 のスーパー猫ガミッチとその周囲のへんてこな風景の話.タイトルだけ見てバリバリの SF かと思って読んでみたらただの猫バカ小説だったでござる.この中では,猫の集会の秘密を描いた「猫たちの揺りかご」が好きだな.楽屋ネタということだけど,猫好きなら誰でも一度は想像するであろう秘密をすんげーバカバカしく描いてて良い.後半は幻想小説とも不条理小説とも言い難い五編の短篇.あるろくでなしと大物ギャンブラーの一夜限りの対決「骨のダイスを転がそう」,不器用で人付き合いの下手な数学者のもとに訪れた謎の女性との甘い数字遊びの時間「春の祝祭」が良かったかな.