大西科学 『晴れた空にくじら 浮船乗りと少女』 (GA文庫)

晴れた空にくじら 浮船乗りと少女 (GA文庫)

晴れた空にくじら 浮船乗りと少女 (GA文庫)

半分うわの空で返事をしながら、雪平はただ、クニのことを見ている。雪平は、なぜクニが一瞬、小さな女の子のように思えたのか、その理由がわかった気がした。雪平の知っている大人の女性は、あまりこうして、他人の目を正面から見たりはしない。

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明治 37 年,日露戦争の最中.空輸会社の社員である波多野雪平は社長から奉天に置いてけぼりを食らっていた.商館の屋上で昼寝するだけの日々.そんなある日,奉天の低空を一頭の浮鯨が通過していった.
墜とされた捕鯨船唯一の生き残りの少女クニと,輸送浮船の操縦士雪平の,日本を目指しての逃避行.「浮鯨」と呼ばれる空飛ぶ巨大生物(?)が存在する世界での日露戦争を舞台にした架空戦記,あるいは改変歴史小説.物語の主眼であるところの浮鯨と,原理は不明ながら物を浮かばせる力を持つ「浮珠」の存在が面白い.「常備浮珠」と「浮動浮珠」を使い,浮珠全体の浮力と貨物の重量を釣りあわせて平衡を保つ工夫しかり,兵器としての運用方法しかり.キャラクターも,特にライトノベルらしからぬねちっこい描かれ方をする主人公の雪平が良かった.いずれの描写も,丁寧だけどやり過ぎない,ちょうどいいバランスが保たれていると感じた.まあ一巻に関して煎じ詰めれば,女の子と空を飛ぶってロマンだよな,ってだけの話だけどな! ともあれ面白かったです.勢いで二巻と三巻も買ってきたので近いうちに読ませていただきます.