久光景 『ももとせ花火』 (メガミ文庫)

ももとせ花火 (メガミ文庫)

ももとせ花火 (メガミ文庫)

「あたしは自分が痛いのなんて、どうでもいい。友達を助けたいだけなの!」
「ふんっ、いきがって。どうせ何も知らない者の言い分ですわ。貴女、まさか──自分だけが耐えればそれでよいだとか、自己陶酔されてませんこと?」
それは平凡な毎日を送って来た那央が始めて受けた、鮮烈な侮辱だった。

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白澄高校歴史研究同好会に所属するのは,部長の秀利,病弱ながらそれを感じさせない奔放さを持つちとせ,そして那央の合わせて三人.もともと歴史に興味がなく,秀利に憧れて入部した那央だったが,ちとせともすぐ仲良くなりそれなりに楽しい日々を送っていた.そんな夏休み前のある日,那央の前に現れた幽霊が告げるには,ちとせはこのままでは間もなく死を迎えることになるという.
第 2 回メガミノベル大賞銀賞ならびにべっんこう賞*1受賞のデビュー作.内に想いを秘めた古風な三角関係と百年越しの恋を描いた小品.夏と花火と三角関係,というテーマは良かったと思う.霊の見せる悪夢的ビジョンが(分量は多くないとはいえ)思いのほかよく描けているのも収穫だった.ただ,三(プラスアルファ)角関係を外から干渉する要因が多すぎて,ラブストーリーとして弱くなってしまっていた.たくさんの幽霊たちや,過去の因縁など,色々なものを盛り込みすぎていたかなぁ.悪い作品ではないのだけれど,整理しきれていない感じ.惜しいなーと.

*1:受賞者はべっかんこうにイラストを描いてもらえる