小川一水 『天冥の標 III アウレーリア一統』 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

「あんたの恨みは間違ったものじゃない。おれが保証してやる。迷うこたないんだ」

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西暦 2310 年.人類は小惑星帯を中心とした太陽系全域に版図を拡げていた.ノイジーラント大主教国は,肉体改造によって《酸素いらず》アンチ・オックスとなった人々が中心に暮らす変わり者の国.ノイジーラントのサー・アダムス・アウレーリアは,強襲砲艦エスレルの艦長として単艦での海賊狩りの任に当たっていた.
海賊狩りの宇宙艦が忘れ去られた動力炉を追うことになる,やがて.シリーズ第三巻は「救世群」から約 300 年後を舞台にしたスペース・オペラであり,少女のような美しさと,子どもっぽさをあわせ持つ艦長キャプテンアダムスの冒険と成長の記録でもあり.喜んだり考えたり悩んだり苦しんだり,裏表のないアダムスたちの航海にはわくわくさせられっぱなし.「海賊的である」ことをめぐる一連のやりとりにはとりわけじわっとさせられた.宇宙空間を飛びまわる,《空気いらず》ならではの活劇も痛快.
冥王斑,救世群,フェオドールなどの,一巻と二巻の隙間を埋める(かもしれない)断片的情報も,世界の成り立ちのなかで提示されていく.あれやそれがどう変化して繋がっていくのか.楽しみなことこの上なし,です.