伊藤ヒロ 『アンチ・マジカル 〜魔法少女禁止法〜』 (一迅社文庫)

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)

「ああ、悪質で下品で子供っぽいギャグだろう? だが、最初から全ては『子供っぽいギャグ』か『皮肉めいた冗談』だったんだ。『子供が魔法で変身して、世界の為に戦う』という事自体がね。

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1997 年 4 月.人類の敵,鬼魔の本拠地を打ち倒した魔法少女連合軍の戦いは終わった.それと同時に,強大な力を持った魔法少女たちは社会から持て余される存在になった.様々なことが重なった結果,1997 年 8 月,「魔法少女及び変身美少女戦士取り締まり法」,通称"魔法少女禁止法"が可決,施行される.ほとんどの魔法少女たちは変身ステッキを捨て社会へ身をくらましたが,たったひとり,スウィ〜ト☆ベリー(24 歳)だけ戦いを続けていた.
幸せだった魔法少女時代の終わり.『WATCHMEN』を,魔法少女ネタで,という一発ネタではある.片やコスチュームヒーローが禁止された冷戦時代のアメリカ,片や魔法少女が禁止された現代日本.オマージュ作品ということもあってか,舞台と時代の違いはあれど,ストーリー運びやパーツにはだいたい整合性が取れているように思う.つってもただなぞっただけにはとどまらない.アメコミと魔法少女の両方への愛と造詣の深さが見て取れ,それがゆえにか,描写には手加減がない.いまどきのライトノベルレーベルではめったに見られないところまで踏み込んだ描写は暴力的で,ひどく胸がむかむかするもので,震えるくらい悲しかった.傑作だと思います.
しかし,『WATCHMEN』を知っているかどうかでだいぶ印象が変わってくるような気はした.こちらも歴史に残る傑作なので,ぜひあわせて読んでみるとよいと思います.

しかし…長らく陰謀の泥沼であがいた後だと、単純な暴力の世界に戻れるのが嬉しいね
故郷に帰るような気分だよ

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