丸山英人 『夜と血のカンケイ。』 (電撃文庫)

夜と血のカンケイ。 (電撃文庫)

夜と血のカンケイ。 (電撃文庫)

「ご苦労さん。どうだった? 初めてのお使いの感想は」
「いいわけがありません。貴方の目は節穴ですか。節穴に決まってますね。そうでないなら鳥にでも突かれて本物の節穴になるべきですね」

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陶原は「病的なまでに健康が突出した少年」である.早寝早起きの規則正しい生活,毎日の運動,バランスの取れた食事,徹底した掃除.周囲から「修行僧」とからかわれるストイックな生活を続ける目的はただひとつ.子どものころに自分を無視した吸血鬼への復讐だった.
吸血鬼少女と,鍛え上げた健康体ゆえに超絶美味な血を持つ少年の奇妙な主従カンケイ.オーソドックスなラブコメだけど,いろいろ気を配って描いている印象は強い.セリフに付随する表情の変化をくるくると細かく,でも邪魔にならないよう描いているのが良かったのかな.主人公陶原のひねくれた動機とその後の行動も面白いと思う.起承転結の「転」にあたる,学校の変化の訪れがぎこちないのがマイナスではあったけど,全体としては悪くなかった.