東亮太 『妄想少女6 だって私は二次専だから』 (スニーカー文庫)

妄想少女6  だって私は二次専だから (角川スニーカー文庫)

妄想少女6 だって私は二次専だから (角川スニーカー文庫)

「葛本くん。キミも二次元が好きなら、これだけは忘れちゃいけないよ」
だが美春は険しい表情を変えぬまま、静かに言った。
「二次元ってのはね、あくまで三次元が存在する上で、成り立っているんだ」

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両親に萌えを否定され,望まぬ海外留学をさせられることになった紗衣は,自分の妄想が作った世界「ミラージュ・ネル」に引きこもってしまう.頑なに二次元に逃避する紗衣を,二次元娘たちに翻弄されながらもなんとか説得しようとする光宏たちであった.
妄想・萌えを実体化するという(最後まで原理不明の)能力を手がかりに,二次元と三次元のひとつの関係を描いた,シリーズ完結編.自分が生み,愛を注いで現実化させた妄想を現実の延長と見るか,三次元の逃げ場と見るか,それ以外のなにかと見るか.それぞれの立場からの,なかなか噛み合わないコミュニケーションを,二次元でのお約束をたーんと交え,とぼけた味で描ききっている.
萌えやらなにやらを一歩引いた視点から見るという,これまでの姿勢は最後の最後まで一貫していた.これまでは冷静でクールな面が強かった紗衣が「私は二次専だから」と頑なに逃避する様子も,その後の出来事も,心理面での深い位置には立ち入らせなかったように思う.単純に萌えキャラを描き,解決するのとは違う,独特の印象がある.良い悪いではないけど,二巻で感じた印象は最後でまた強まった.