日日日 『ひなあられ』 (講談社ノベルス)

ひなあられ (講談社ノベルス)

ひなあられ (講談社ノベルス)

つねに相手の動向を窺い、不快にさせないように、かといって蔑まれないぐらい自分の立場を保ちつつ、気を遣ってつきあう。それは、たいへんだった。けれど、それがたいていの場合、コミュニケーションだった。
ぼくはそういう、ふつうの人間関係にうんざりしていた。
魔をもたすだけの会話、空気を読むだけの交流、兵站として無意味な情報を蓄えてそれをまきちらし、戦略をたてつづけなくちゃいけない、コミュニケーションという戦争。ぼろぼろに被弾しすぎないように、けれど相手を傷つけないように、かといってまったく刺激を与えないのもよくない、針の上を歩くような交流。
億劫だった。

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「ばけばけ」「ひなあられ」「かものはし」「オレオ」の四短篇を収録.学園ミステリ短篇集,ってくくりでいいのかな.いずれの短篇も,一人称を複数人物で切り替えながら,異常なシチュエーションを浮き彫りにしていくという同一の手法で描かれる.ミステリのためのミステリであり,さらに揃いもそろって「いやな話」ばかりというあたりはいかにもメフィスト掲載らしい(偏見).嫌がらせのようなシチュエーションを,嫌がらせのように面倒臭く描くという.このなかでは表題作がいちばんよかったと思うけど,楽しい作品集ではなかったなあ.