折口良乃 『九罰の悪魔召喚術 III』 (電撃文庫)

九罰の悪魔召喚術〈3〉 (電撃文庫)

九罰の悪魔召喚術〈3〉 (電撃文庫)

「おや、その顔は。大食は罪、怠惰は罪、好色は罪だと言いたげだね。はは、まあ確かに教会にこんな話をすれば、嫌な顔をされるだろうがね。贅沢を禁じ、堕落を禁じ、性愛を禁じる。なにも景教に限らないがね。私からすれば、こういう宗教は生きることを否定しているように見えるのさ。もっとも、聖と俗という分類から見るのならば、現世の生は当然否定すべきだろうし──それに、私はなにも好き勝手やるべきだと言っているわけではないさ。適度な分別、理知、自らへの制限、どれも良く生きる、人間らしく生きるためには必要だろう。ただ、もっと、なんというかね、生物の根源にあるような生を、私は求めたいんだ」

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二月,四旬節の季節.七日間のカーニバルがはじまった.九罰と七罪の兄妹と居候の悪魔アイムは,丘の上の幽霊屋敷に住むと言われる女性を訪ねる.そこで三人を迎えたのは,妖艶な女性と木製の仮面を被った騎士だった.
宗教パンクな世界観のシリーズ第三巻.ある女性と,それに騎士として仕え続けた悪魔の主従関係を描くエピソード.不器用で変わった信頼関係の形を,ちょっとだけハッタリを効かせて.唐突に話が回る感はあるけど悪くないかな.あと,世界観の見せ方が小出しになってきた感はあるけど,「景教大国」日本のいまとは少し違った価値観がやっぱ楽しくて良い.新しいキーワード「悪魔憑き」も飛び出し,以下次号で〆.……しかし続きが出る気配はないのよね.好きなシリーズなんだが,仕方ないのかなあ.