大間九郎 『ファンダ・メンダ・マウス 2 トラディショナルガール・トラディショナルナイト』 (このライトノベルがすごい!文庫)

「聖人? ふざけないで、私の愛しい人をそんな下らないものと一緒にしないで。彼は聖人じゃない。彼は苦しんで、悩んで、憎んで、殺したくて、それでも受け入れてるの。全てを受け入れてるの。そんな簡単な事と思ってるの? 狂ってればなんでもできると思ってるの? バカじゃないの? 彼は人間、軟らかい肉を持ち温かい血が流れたただの人間よ。それが受け入れてるの、自分の身を切り、骨を砕き受け入れてるの。バカにしないで、聖人なんて下らないことで納得しないで、助かりたいなら、救われたいなら、貴方は彼を受け入れなさい」

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第 1 回『このライトノベルがすごい!大賞栗山千明賞受賞作の第二巻.消えた 10 キロのヘロイン,第三夫人,華僑の権力闘争,復讐,救済.さまざまな思惑をはらんだトラディショナルな夏の一夜はけたたましく更けていく.ハードボイルド味を強くしたストーリーはサブタイトルどおりトラディショナルで,キレを増した独特のテキストが恐ろしいくらいマッチする.バラバラに進行する物語は,視点を入れ替えながら,やがて一ヶ所に集結してゆく.決してド派手というわけではないんだけど,あのテキストでストーリーテリングまでかっちりやられたら,そら惚れるしかない.そしてなによりフェイ=マウスが格好良すぎた.プロフィールとあとがきも素敵だし,この作者は本物かもしれないなあ,と.傑作でした.