本田仁美 『イミテーションスカイ』 (幻冬舎ルネッサンス)

脳波連結型電脳遊戯.通称プレイ・バイ・インテレクチャル・ゲーム,頭文字を取って PBIG と呼ばれるこのゲーム機器は,人間の脳波と連動することで『実体験に近いリアルなゲーム』を売りに急成長を遂げていた.谷川祥治はゲーム世界の不正行為を裏から取り締まる SSGM(シャドウ・グランド・ゲームマスター)として,運営会社にバイトとして雇われる.
オンラインゲームと現実との関係について.これは厳しいなあ.もはや目新しいものではないテーマをどう料理するか,というところが気になったのだけど,説明的すぎるうえにステレオタイプすぎる.前半のほぼ丸々をゲームの説明と主人公の境遇の説明だけに費やすのだけど,これといった伏線として働いているわけでもないという.家族関係はじめ投げっぱなしすぎるラストも受け入れがたいし,なにより作中で語られる現実とゲームの関係にもまったく共感できるところがなかった.不愉快とかいう以前に,理屈がちょっと分からない.「人間が描けていない」というやつなのか…….