グレッグ・イーガン/山岸真訳 『ディアスポラ』 (ハヤカワ文庫SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

《カーター-ツィマーマン》ポリスが千のクローンを作って、そのクローンが千の目的地にむかって発進したとき、この《ディアスポラ》計画に参加した市民の圧倒的大多数は、目的地到着まで自分の全スナップショットを凍結しておいて、倦怠と危険の両方を回避するという賢明な決定をした。もしスナップショット・ファイルが、クローンされた瞬間以来いちども走らされることなく旅の途上で破棄されたとしても、それは損失も死もなにひとつ引きおこさない。多くの市民はそれに加えて、到着した星系がじゅうぶんに興味深いところだと判明したときにだけ自分を再スタートさせるように界面ソフトをプログラムして、失望を味わう心配すらないようにしていた。

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肉体を捨てソフトウェア化することを選択した人類は,長い時間をかけて宇宙へと進出を果たしてゆく.数千年(以上)に渡る壮大な数学 SF.数学や物理用語が多用されているためパッと見かなり難解なのだけど,解説にある通り「わからないところはばんばん飛ばす」読み方でもけっこうなんとかなる.多次元宇宙の描写には(じゅうぶんにイメージできている気はしないのだけど)わくわくとくすぐられる.あとがきと解説にもあるけども,「人間」が中心に描かれていることも,ある程度の分かりやすさと物語への親近感を生んでるのかな.具体的に言うと,多次元観境からより低次元へ移動した際の閉塞感とか.面白かったです.