鮎川歩 『ユメオチル、アリス』 (ガガガ文庫)

ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)

ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)

そこには、超巨大な赤ん坊が立っていた。
大量の母親と、その恋人たちの肉体から形成された騙し絵のようなその容姿は、吐き気を催すほどにおぞましく、それ以上に禍々しい。
ここまで聞こえてくる「だぁ」だの「あぶ」だのという赤ん坊の喘ぎ声は、恐らく構成物である人間の口、一つ一つから発せられているのだろう。まるで全身の毛穴から音が漏れているみたいで、僕は怖気を振るう。

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カガミマクラとは,枕の下に鏡を敷いて寝ると夢魔が現れるという都市伝説.高校生の有栖幹人はその夢のなかで,真っ白い少女・ルルディに出会う.ルルディは,「完全明晰夢」を手に入れるよう幹人を誘う.
「完全明晰夢」とは,何もかも思いどおりになり,現実よりもリアルに物事を体感できる世界.あらすじに惹かれて読んでみたのだけど,かなり粗い印象.「完全明晰夢」世界の描写が「ちょっと変わった日常」程度でやけに地味だったりとか,夢を完全制御しても現実はどうなるんだとか(後半で明かされるのだけどそこまでが長い),首を傾げることが多かった.大枠はともかく中身は異能ものの範疇を外れていないのも物足りない.「夢」をテーマにするのは難しいのだと思うけど,メインに据えるならもう少し煎じ詰めて欲しかった.