- 作者: カミツキレイニー,文倉十
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/05/18
- メディア: 文庫
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ここで生まれた言葉も、感情も、彼女を想って流した涙も全部。愚かな自分と一緒に、焼き尽くしてしまおうと決めた。
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せめて自分の手で、消し去ってしまおうと決めた。
こうして彼は、屋上を燃やすことにした。
──俺はあの日の俺を殺したいんだ。
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星空を見上げて、ブリキは言った。バカげてる。過去の自分を殺したいなら、生きるしかないというのに。
私,三浦加奈は失恋した.飛び降りて死ぬつもりで登った学校の屋上で,加奈は臆病な「ライオン」,知恵の無い「カカシ」,心の無い「ブリキ」の三人と出会う.彼らは「復讐」をするためにここに集まっているのだと加奈に告げる.
「オズの魔法使い」のキャラクターに自らをなぞらえる彼らは,最後に何を手に入れるのか.第 5 回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞の「青春ジュブナイル」.失恋してすべてを失ったと思い込む女の子主人公の一人称,というのが新鮮.屋上の三人をそれぞれ見つめる視線が非常に生き生きしていて楽しい.随所に挟まれる吹奏楽部やホイッスルの音といった「屋上」の演出も効いている.地に足の着いた描写と,「オズの魔法使い」の名前を使う少年少女という組み合わせが不思議な感覚を生んでいた.学校の屋上も,やり方次第で非日常空間たりえるのだなあ.一見してバラバラのような出来事が,ちゃんと意味を持って絡みあう物語も,過程は少し強引かなという気はしたけど良いと思う.そして青春すぎるラストがまぶしいことこっ恥ずかしいこと! 楽しませていただきました.次回作が出るのを楽しみにしています.