瀬尾つかさ 『放課後ランダムダンジョン』 (一迅社文庫)

放課後ランダムダンジョン (一迅社文庫 せ 1-5)

放課後ランダムダンジョン (一迅社文庫 せ 1-5)

「この先は、日本じゃない。地球じゃない。ようこそ、異世界人たちが住む特区、『学園』へ」

放課後ランダムダンジョン (一迅社文庫 せ 1-5) | 瀬尾 つかさ, CH@R |本 | 通販 | Amazon

今からおよそ 20 年前,地球のあちらこちらで異世界と繋がる通路が生まれた.いくつもの異世界間で交流が生まれ,ヒトと文化の行き来が生まれた.それから 15 年後,その通路はなんの前触れもなく断絶された.そのあとに残ったのは『迷宮』と呼ばれる異世界だった.『迷宮』の地下 100 階にあると言われるそれぞれの世界への通路を求め,残された冒険者たちは日々ダンジョンの探索を行っていた.
学園もののゲーム小説かと思いきや,タイトルに反して中身はえらく重い.ランダムダンジョンが日本に存在してしまっていること,その最前線が『学園』と呼ばれる施設であること.このシステムがいかに狂っているか,そしてこの描かれる世界がいかにぎりぎりの瀬戸際にいるかが,わりと軽い調子のテキストで,繰り返し執拗に描かれる.それぞれのシステムについての説明は合理的で淡々としており,読んでくうちにだんだんこちらの感覚がおかしくなっていく.ダンジョンで手に入れた物品を売り払えるので,探索者たちは裕福になれるという描写も,金銭単位が「円」であることが異様さを際立たせていた.本論ではないかもしれないのだけど,結果的にアンチ「学園もの」と読めなくもない,のかな? かなり異彩を放つ一作だと思う.すごく良かったです.