松山剛 『閻魔の弁護人』 (新風舎文庫)

閻魔の弁護人 (新風舎文庫)

閻魔の弁護人 (新風舎文庫)

「自分の手のひらに乗る量。それが『一握』。一握りの重さを忘れないで。そうすれば、あなたはもっと多くのものをつかめるはずです」
一陣の風が吹き、彼女の手から土くれがこぼれていった。
「今日からあなたの名は『一握』です。どうですか?」
一握。変な名前だな、と思った。

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六道世界の地獄道に弁護人制度が創設されたばかりのころ.弱者を好んで弁護している地獄の弁護人,藁掴の事務所に,新米弁護人の河流が押しかけてくる.これが六道すべてを巻き込んだ戦争のはじまりだった.
おなじみの地獄道からはじまり,傲慢な支配層の君臨する天道,地獄よりさらに下に置かれ虐げられる餓鬼道,畜生道修羅道へと,物語のスケールはどんどん大きくなっていく.価値観をひっくり返して描くのが好きだと第二作のあとがきに書いていたと記憶しているのだけど,なるほど構図が分かりやすい.というかえらく極端ではある.仏教に明るくないのでよく分からないのだけど,阿弥陀如来が極楽の独裁者だったり,光背や白毫から無量光(アミターバ)(=ビーム)を撃ちまくって世界を燃やしたりするのはいいのだろうか.どこか古橋秀之チック.面白いからいいんだけど.
第 8 回新風舎文庫大賞準大賞受賞.一迅社文庫を経て先月『雨の日のアイリス』で再デビューを果たした作者のデビュー作.新風舎のその後はご存知のとおり,ということで店頭ではなく,二年前の文学フリマで作者から直接買いました.皆も次の文学フリマへ行ったら買われるとよろしいかと.