ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田奈保子訳 『特捜部Q ─檻の中の女─』 (ハヤカワ・ミステリ)

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

「なぜそんなにしょげ返っているんです?」アサドが笑う。「あの低俗な新聞のことはもう考えないことですよ。両手両脚を骨折するよりははるかにましだと考えてみたらどうですか?」
実に独創的な励まし方だ。

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848) | ユッシ・エーズラ・オールスン, 吉田奈保子 |本 | 通販 | Amazon

デンマーク政界の再編に伴い,未解決事件の捜査を専門とする「特捜部Q」がコペンハーゲン警察に新設されることになった.地下室とシリア人の部下アサドをあてがわれた捜査官カール・マーク警部補は,五年前に発生した政治家の行方不明事件を追うことになる.
事件で部下を失ったデンマーク人警部補と,身元不明だけどとぼけてて憎めないシリア人の変テココンビが行く.デンマーク発の刑事小説シリーズ第一弾.五年前の未解決事件と現在(2007 年)の捜査が徐々につながり,空白だった時間が明かされ重なってゆき,事件の異様さと気持ち悪さが浮き彫りにされる.ミステリとしてはオーソドックスなものかもしれないのだけど,少しずつ出されるパーツが脳内でパチパチと組み上がっていく感覚が非常に心地良い.堅物刑事とおとぼけシリア人のコンビもいい感じに力が抜けているのも読んでて楽しい.
ってことで良かったです.二作目の邦訳もすでに決定しているようだし,シリーズがどんどん邦訳されると嬉しいなあ.期待しております.