瀬尾つかさ 『約束の方舟』 (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)

「覚えておいて。ベガーを守りたいなら、子供たちが団結する必要がある。でも、みんなの心をひとつをするには、シンボルが必要なの。昔の映画でもそうだった。大きな主張は、強力なシンボルを通してこそ相手の心に響くの」

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タカマガハラ II へ向けて,100 年の旅の途上にある多世代恒星間航宙船の中.人びとはゼリー状の生命体「ベガー」と共生しながら暮らしていた.船がタカマガハラ II に到着するまで 6 年ほどとなったある日のこと.12 歳のシンゴは,ある日幼なじみの少女テルに唐突にプロポーズされる.
ベガーとの共生を望む子どもたち,ベガーを恐れる大人たち,そしてベガー.ある事故によりそれぞれの調停役となったシンゴの十二歳から十八歳までを,三部に分けて描く,「陰謀と友愛が交錯する新世代宇宙SF!」.宇宙船内の冒険ものの風情が強い.筋立てはシンプルで悪くはないのだけど,情報の出し方があまりスマートでないのが気になったところ.例えば,15 年前にベガーとの戦争があり,意思疎通に成功して共生を図るようになったとは言うのだけど,そもそもどうやってゼリー状生命と意思疎通がはかれたのかがあと回しのまま進むとか.途中で空気になるキャラクターやクライマックスの盛り上げ方など,それ以外に引っかかるところも多かった.作者はすごく器用に話をまとめるひとだと思っていたのだけど,既刊と比べるといまいちキレがない.勝手な推測だけど,かなり悩みながら書いたんじゃないかなあ.