原くくる 『原くくる処女戯曲集 六本木少女地獄』 (星海社FICTIONS)

原くくる処女戯曲集 六本木少女地獄 (星海社FICTIONS)

原くくる処女戯曲集 六本木少女地獄 (星海社FICTIONS)

少年 …僕、学校は嫌いだよ。
六本木少女 私も。
少年 学校じゃ、「あなたはとっても大切です」「あなたはとてもいい人間です」って教えられるから。
六本木少女 教えられないわよ。
少年 直接は言わないよ。でも、それが学校のずるいところなんだよ。

六本木少女地獄

想像妊娠をした引きこもりの少女の父親は誰? 東京都高等学校演劇コンクール,関東高等学校演劇研究大会にて各賞受賞した表題作「六本木少女地獄」ジェンダー/セックスや父性といった話を中心に,キリスト教的な原罪と許しを絡めて,六本木という土地に落とし込む.作者の熱量を最も強く,ぴりぴり感じる.
いじめ問題を「銀河鉄道の夜」をモチーフにして描く「スズキくんの宇宙」.救いのようにも諦めのようにも見えるラストには正直あまり感情移入できなかったのだけど,言葉にしがたい余韻がある.
「月の爆撃機は地球の最期を目の前にしたドタバタ劇.意志が人間を導くという,まっすぐな話を変化球で,という.中二的,というと誤解されるかもだけど,そういうまっすぐさがあると思うの.
女三人がネギでチャンバラするドタバタ劇「うわさのタカシ」,ドライさんとウェットさんという二人の家庭教師が大暴れする「家庭教師のドライ」はともに軽い感じのスラップスティックコメディ(?).後者は 2011 年 5 月初演とのことで,契約しようよ! だの原発ネタだのが使われている.
現役の女子高生作家による処女戯曲集.場面転換がめまぐるしくて恐ろしく早い&固有名詞が少ないため,戯曲で読むと少し分かりにくいところがあるかな.そのかわり(というわけではないけど)疾走感はかなりのもの.演劇は知人のやっているのをたまに観に行く程度なのだけど,これは舞台を見てみたくなった.