瑞智士記 『展翅少女人形館』 (ハヤカワ文庫JA)

展翅少女人形館 (ハヤカワ文庫JA)

展翅少女人形館 (ハヤカワ文庫JA)

──想像してくださいな。全人類が一人残らず死に絶えた世界に陳列された、墓標の如き人形達。音楽も踊りも要らぬ、永遠の饗宴……。もしかしたら、それこそが真の理想郷かもしれませんわ。

Amazon CAPTCHA

人類が球体関節人形しか産まなくなってから数十年が経った.奇跡的にひとの姿で生まれてきたミラーナ,マリオン,フローリカの三人の少女は,必里尼斯(ピレネー)修道院に隔離され密やかに暮らしていた.ここへ現れた四人目の少女が,事件のはじまりを告げる.
姉への依存症にあるマリオン,ストイックにバレエに打ち込むミラーナ,人形細工師のフローリカ,そして半人半人形のビアンカ.地球に残された最後の少女たちが送る最後の日々.SF というよりは幻想小説かな.病的なゴシックと,濃厚な百合がミックスした,ものすごい雰囲気がある.どこかしら病的で,かつギラギラしたものを抱えた少女たちが強烈な存在感をぶつけ合う,という.ガチの百合というのは,少女と少女の戦いでもあるのかな…….
人形として存在することで「繁殖などという低劣な目標から、種を解き放つことに成功した」人類という言葉には,うまく言えないけど個人的に頭をガツンとやられた感じ.すごいものを読んだのではないかという気がしてます.