松田朱夏 『ハイブリッド・ソウル そして、光の中を』 (富士見ミステリー文庫)

そして──同時に、妙に気持ちが高ぶってくるのを感じる。
腹違いの兄妹による旧家の相続争い。掛軸に隠された暗号。湖畔に立つ洋館。親同士の確執に悩む二人の美少女────
まるっきち推理もののドラマのようではないか。
(俺が探偵役か? 「表具師探偵・多志麻竜介の事件簿」なんちって──)

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不思議な掛軸の謎と,母娘三世代が織りなす確執を,表具師見習いの竜介が解き明かす.ストーリーは地味なほうだと思うのだけど,小京都の雰囲気を持った町並みの描写や,掛軸をめぐる謎など,もろもろのディテールが丁寧に描かれていて飽きない.クライマックスの展開にはポカーンとしたけど…….いくらでも穏便な収め方もあっただろうに,どうしてこういう展開にしてしまったのか.ちょっと事情を聞いてみたいなと思った.全体としては悪くなかったと思います.