- 作者: 五代 ゆう,前田浩孝
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 文庫
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二メートル近い長身の異形のものが酒場の屋上からあたりを睥睨していた。王冠のように頭部は高くそびえ立ち、青白い肌は変身のなごりに内側から映え、手足を覆う甲殻は白銀のきらめきを放っている。冷気が白い靄となって地上まで降りてきた。
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それは鋭い牙を見せて一声咆哮すると、跳んだ。青い光の尾を引き、火と煙を上げる〈協会〉ドームをめざす。
人々はただ呆然として異形の姿を見送るしかなかった。同じような光の筋があと三つ、流れ星のように虚空を渡って、〈協会〉ドーム方向に消えた。
戦闘用バイオメカニック〈ASURA〉として目覚めたサーフ.彼が見たのは,支配層と被支配層がはっきり別れ,荒廃しきった名ばかりの〈楽園〉だった.
舞台を〈煉獄〉から〈楽園〉へと移し,クライマックス目前のシリーズ四巻.兵器あるいは〈悪魔〉として恐れられ蔑まれるサーフたち.ボロボロの世界でかたや地下でネズミのように,かたやドーム都市で快適な暮らしを約束された人間たち.そして新人類の誕生を夢見る〈協会〉.〈協会〉に囚われたセラを助けに向かう〈エンブリオン〉のメンバーは,〈楽園〉で生きる者たちの様々な思惑に囚われてゆく.〈煉獄〉と〈辺土〉で描かれてきた出来事が収束していく物語はおおいに盛り上がってゆく.極限的な世界において『生命』『生きる』『生きた』ということをシンプルに問いかける物語も良いなあ.にしても,〈悪魔〉であり,どうあっても人間にはなれないサーフたちがすべてを見渡す役目になるのは皮肉が効いている.次でとうとう最終巻.楽しみにしております.