来楽零 『ロミオの災難』 (電撃文庫)

ロミオの災難 (電撃文庫)

ロミオの災難 (電撃文庫)

誰が叫んだのか、それが何に対する叫びなのか、もうわからない。
いきなり自分の人生に強制的に幕を下ろそうとしている運命への悪態なのか、それとも現実にいる──それもすぐ側にいる誰かへの悪態なのか。
目をつぶった“ロミオ”の頭の上に、誰かの髪の毛がかぶさった。
──いい匂いがする。
パニックで正常な思考回路が焼き切れたのか、そんな呑気なことを思った。
そのままバスは、落ちて、落ちて、落ちて────

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文化祭まで間もなくの時期.5 人きりの演劇部は,先輩部員が残していったと思しき,5 人用に脚色された『ロミオとジュリエット』を演じることになる.偶然から都合よく手に入った脚本を手にした部員たちに,その直後からおかしな変化が起こり始める.
過去の演劇部員たちの思いが巻き起こす奇妙な恋愛模様.これは良かった.ホラーというかオカルトというかサスペンスというか,不気味な影や怨念が漂う序盤〜中盤が,こんなラストへ繋がっていくとは思わなかった.クライマックスで演じられる『ロミオとジュリエット』のシーンが,それまでの暗い影をだんだんと晴らしていく感じ.良い意味で予想を裏切ってくれる,気持ちのいいラストだった.生きているってすごく強いことなのね.