時田唯 『有川夕菜の抵抗値』 (電撃文庫)

有川夕菜の抵抗値 (電撃文庫)

有川夕菜の抵抗値 (電撃文庫)

──こいつらバカだ、と夕菜は思う。
相手がパラライザーと知りながら近づいてきたり。怪我したり。大喧嘩したり。
それでも近寄ってきて。
こいつらバカだ、と夕菜は思う。馬鹿なぐらい、純粋なお人好しなのだとも思う。
その事にすら気づいていなかった自分は一体、どれくらい阿呆なのだろうか。

Amazon CAPTCHA

転校生の有川夕菜は,ストレスなどを感じると電気を発してしまうデンキウナギ的体質の持ち主,パラライザーである.この体質ゆえにかつて大切なひとを傷つけてしまった夕菜は,周囲に誰も近づけないように虚勢を張り続けていた.
「パラライザー」という特異体質を抱えた少女が新しい環境で心を開くまで.丁寧に描かれた,暑苦くて古き良き学園小説.パラライザー=ハンディキャップとそのまま置き換え可能だと思う.「低確率で伝染する遺伝病」というのが味噌かな.おせっかいなクラスメート,生徒会,家族といった面々が,それぞれ抱えるかつての「失敗」をもとに試行錯誤.臆病になったり大胆になったり,正解のないコミュニケーションにわたわたする.セリフの合間に細かいアクションが入るのが,心情を測りやすくしている.
てことで良いものでした.ほかの作品もそのうち読んでみます.