- 作者: 籘真千歳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 文庫
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「あなたが正体を明かさないのは、あなたが隠しているからではなく、あくまで私たちの側があなたたちを理解できないからだと、そう言い張るわけね?」
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『その通りです、閣下。人は社会との隔絶を経て、初めて物語の主人公になる。古今東西、世界のあらゆる逸話や伝承や創作の全てにおいて例外はない。アーサー・ペンドラゴンがカリブルヌスを抜いたことで王となって叙情詩の幕が開け、親友と愛妻の裏切りによって最果ての孤独に苛まれながら幕が下りるように。隔絶のきっかけが奇跡を起こす魔法や神宝であるにしろ、人々から嘱望された使命であるにしろ、社会から排斥された屈辱であるにしろ、畜群 の理解を超越したときにはじめて、彼は一介の端役から主人公に変貌するのです』
関東湾に浮かぶ人工島,東京自治区では,〈種のアポトーシス〉に感染した男女が別々に隔離され,第三の性である
人間と
物語はいくつかのヒントと大きな謎を残しつつ〆られる.今回の主眼は,あとがきにもあるように,価値観の変動がどのように形成されてゆくか,なのかな.この世界観の根幹に関わる大きな事件が動くものの,語りはむしろかなり淡々としている印象を受けた.これ一冊ですべてが解決されるわけではないので,少し消化不良気味な気持ちはある.しかし,紙面から立ち昇るじりじりした執念みたいなものは本物だと思う.不満はきっと続巻で解決してくれるはず.そのためにも,皆も買って読むといいと思うよ!