- 作者: 森田季節、他
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2011/09/26
- メディア: 新書
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ふわり、髪が翻る。
眠れぬ夜のトライアングル
いつもはリボンで留めた、羨ましく思えるほど綺麗な髪。それは夜の光を浴びて、金の糸を束ねたように弧を描いた。
「あかりはさ、いい子だから」
「え?」
「たまには、悪い子になってもいいよ。私はいっつも迷惑かけてるけど、先輩なんだからさ。頼ってよ、すこしくらい」
先輩らしく、さっ。
笑顔が、あかりには本当に美しく写った。
完成度は森田季節「ゆるい夏の日」が飛び抜けている.ギャグで始めて濃厚な百合(妄想)で掴んで,穏やかな日常でほっこりさせてギャグで落とすという全体の流れが完璧すぎる.ショートストーリーの教科書にそのまま載せられるのでは.
肉体的な百合描写では瑞智士記「ゆるっと生徒会」が抜けていた.『展翅少女人形館』でも披露された描写力がいかんなく発揮されている.これ「ゆるゆり」じゃなくてガチゆりだよ! っていう.しかしパロディネタが多かったのは少しげんなりした(ネタ元作品の知識がないのもあるけど).
いちばん好きなのは菅沼誠也「眠れぬ夜のトライアングル」かな.お泊り会を抜け出した京子とあかりの夜の散歩とか,シチュエーションが素敵すぎる.
……ということで,三人の作家による『ゆるゆり』ショートストーリーアンソロジーでした(タイトルどおり).原作を知らないと厳しいかもだけど,三者三様の色がけっこうしっかり出ていたと思う.良かったです.