南井大介 『小さな魔女と空飛ぶ狐』 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

かくしてこの日、二人の天才が人類の宿痾、戦争に関与することを決め、兵器開発という不毛極まりない努力に全才能を注ぎ込むことを決めた。
『小さな魔女』と『気狂い賢者』の戦いが始まった瞬間である。

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隣接するレヴェトリア皇国とヴェストニア共和国は緊張状態にあった.「狐」の異名を持つレヴェトリア空軍パイロットのクラウゼ・シュナウファーは,皇族の血を引く天才少女科学者,アンナリーサの補佐を命じられる.一方のヴェストニアでも,かつての天才科学者,アジャンクールが兵器の研究を(紆余曲折ありつつ)着々と進めていた.そんな折に発生した世界同時多発テロが,彼らの運命を大きく揺るがすこととなる.
敵対する二人の天才科学者を中心に描く戦記小説(主人公はわりと置いてけぼり).タイトルからてっきりファンタジーかと思いきやのミリタリもの.「人類の宿痾」である戦争を,程良く下品に,社会的・技術的背景や,出口もなくどうしようもない人間の愚かさも盛り込み,レーベルに似つかしくないだけのディテールが描かれる.ミリタリものはあんま詳しくないのだけど,説得力は十分にあると感じた.良かったです.