木本雅彦 『くあっどぴゅあ』 (ファミ通文庫)

くあっどぴゅあ (ファミ通文庫)

くあっどぴゅあ (ファミ通文庫)

実際、静華が缶コーヒーを飲む姿は、それはもう絵になっていて、そのまま写真に撮っておけばアフィリエイトががっぽがっぽ来そうな映像だった。男らしいというのは正しい表現ではない。長くてゆったりとウエーブした髪に、細い顎のライン。目は大きくて力強く、それでいて眉毛は細くて鋭い。髪はピンやヘアクリップで何カ所も留めているせいで、勝ち気そうな瞳が露にになって強烈な印象だった。Tシャツの胸には、括弧だらけの S式が書かれていることからすると、LISP というプログラミング言語の愛好家らしいが、それもまたいいセンスだ。コートの代わりなのか、白衣を羽織っているのが、ワイルドでいい。そんな美少女が、足を組んで片手を後ろについて、ベンチでコーヒーを飲んでいるのだ。日常の疲れや退屈を、全部コーヒーの苦味と一緒に飲み込もうとでもするかのように。

Amazon CAPTCHA

鮎見勇は,ロボット競技「サイドキック」の中学最後の大会で惨敗を喫した.もう二度とサイドキックなんかやるものか.学園都市に進学し,高校デビューだ彼女を作るぞと意気込む勇は,変わり者の美少女静華とひょんなことから己の童貞をかけてサイドキックで勝負することになる.
ロボット競技にかける四人の青春.非常に王道の部活もの.ちょっとだけ近未来の学園都市の描写が気持ちいい.技術がひとを幸せにするという確信が地盤にあって,その上にしっかと固められた近未来というか.地の文(一人称)にどことなくギーク臭(?)がするのは,分かってやっているのか,作者の地が出ているのか.たぶん両方だと思うけど,オタネタの配分は適度で頭に入りやすいと思った.キャラクターの関係や背景はもうちょっと踏み込んでくれたほうがよかったかなあ.