- 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,渡邊一民
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2011/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
妙な生活だ、魚の生活なんて!……
Amazon CAPTCHA鯛 へんなものさ!真鯵 っくりと見るとしよう……どうしてそんなふうにして生きられるものか、これまでわかったためしがない。そうした形態での生命の水在は、世の涙を誘わずにはおかぬ事柄のなかでも、水ぎわだってわたしを不安にするのである。だから水族館はわたしにとって、焼きごてをごっそり真赤に灼くたぐいのものなのだ。きょうの午後、わたしは〈異国の都〉の洞窟園が誇りとする水族館を見にいった。そこですっかり動顛してしまって、係員に追い出されるまで動こうともしなかった。
雲追い石に守られ,決して雨の降ることのない街,〈ふるさとの都〉では今年も恒例の〈聖グラングラン祭〉の時期がやってきた.市長ナボニードの三人の息子たちは,父親のある陰謀を明らかにすることになる.
不思議な都をめぐる出来事が三人の息子たちの一人称で描かれる.言語実験者のフランス文学と聞いていたのだけど,すごく素直に読める.留学先の〈異国の都〉で勉強もせず海老と穴居魚を観察し〈非人間的なもの〉の深淵を考察する長男ピエール,活動写真の女優であるアリス・フェイに本気で恋してしまう次男のポール(アリス本人に会った途端気絶してしまう)など,登場人物はボンクラ揃いだし,〈聖グラングラン祭〉や雲追い石を失って雨に沈む〈ふるさとの都〉の描写も面白い.都市,祭,陽気な幻想,ボンクラと揃っているあたり,森見登美彦っぽくもあるかな.ファンなら手にとってみてもいいかもしれない.面白かったです.