小泉陽一朗 『夜跳ぶジャンクガール』 (星海社FICTIONS)

夜跳ぶジャンクガール (星海社FICTIONS)

夜跳ぶジャンクガール (星海社FICTIONS)

楓の首を絞め始めてからもうすぐ一年が経つ、ということは姉が死んでからもうすぐ一年が経つということだ。姉が死んでから僕はどういうわけか人の首を絞めたくてしょうがなくなって、半分ふざけて男友達=足立の首を絞めてうげーとかやってたんだけど全然『首絞め衝動』はおさまんなくて、どうやら僕は女の子の首が締めたいんだということに気づいて、楓に相談してみた。
楓はすんなり「私の首で良かったら貸すよ。利子百倍だけどね」と僕の衝動の捌け口に立候補してくれた。それから僕は一日一回、毎日毎日、楓の首を絞めている。

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病院だった廃ビルで『首絞め衝動』を収めていたアユムは,向かい側のビルの屋上で銃を握るクラスメイトの墓無美月を見つけ,次の瞬間に失禁した.『首絞め衝動』を喪ったアユムは一目惚れした墓無に告白するが見事にふられる.そんな折,彼らの住む福島県矢島市では少女連続自殺中継事件が発生していた.
失くしてしまった「非日常」を追い求める墓無と,自分の首を貸す楓.ふたりの少女と首絞め衝動と自殺中継と.『ブレイク君コア』星海社からデビューした作者の二作目は刺激的で後味の悪いな青春劇.読みながら思ったのは,「自分の知らないところで SOS団が何をやっていたのかを知ったハルヒのその後」を,ポップな文体でいやなふうに書くとこうなるのではないか? ということ.「現実」を描くのに使われるのが,前時代的な(いまどき本気で使うひともいないであろう)仕掛けだったり,そばにありながらもう手に入らないものとして扱われる「非日常」だったり.うまく言えないんだけど,一貫したなにかは確かにあると感じる.どんなもんか,みんなも読んで私に説明してくれるといい.