諸口正巳 『世界時計と針の夢』 (C★NOVELS FANTASIA)

世界時計と針の夢〈上〉 (C・NOVELSファンタジア)

世界時計と針の夢〈上〉 (C・NOVELSファンタジア)

「むりだーて、いてるじゃーか! にイさーにぁわからないンだ! みんなみんなむひにんげんがだいきらひだ。ぼくだてだひきらいだ! ぼくはころひゃれるンだ、いひぶうけられてころひゃれる。ぼくわいやだ、にイさンいがいみんなひんじらンない!」

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「合理的だ! やはり、実にうまくできている。そうでもなければ、不老不死の尖兵などやっていられないだろうからな。心があれば、それは必ず狂う。時計は動くたびに少しずつ狂っている。心は狂うためにあるものだ。そんなものはいらん。世界に心はあるのか?」
「……わからない」
「あると考えるほうが自然だろう。見ろ。狂っている!」

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事故によって指を失った一級時計士のシリルは,蝿になってしまった母と巨大なカマキリになってしまった弟を抱えて細々と暮らしていた.ある晩のこと,バラバラにされた町兵のクマバチと双子の兄妹を助けたことから,壊れかけた世界を元に戻す手助けをすることになる.
壊れかけた悪夢的世界をめぐる物語.妄想に取り憑かれた町,狂った人間を殺す町兵,目が覚めると虫になっている人々,断末魔の悲鳴をあげる世界…….コントロールされた悪夢,とでもいうか.グログロだったりドロドロだったりズルベチャだったりしているのだけど,エンターテイメント的な意味でわりと読みやすくもある.しかし,個々の描写は面白い一方で,テーマがややまとまりきっていない気はした.世界観や狂気に慣れてしまうと,物語のインパクトがかなり薄く見えてしまうのなー.あとがきによるとかなり難産の作品だったらしく,その名残りはあちこちに見え隠れしていた.