グレッグ・イーガン/山岸真編・訳 『プランク・ダイヴ』 (ハヤカワ文庫SF)

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF)

ジュリーは矢も楯もたまらずといったようすで結晶(クリスタル)を手に取ると、肉眼でわかる特徴を見落としていたと思っているかのように、あらためて調べまわした。「仕事の内容を聞かせていただけますか?」
「産婆役だ」
ジュリーは声をあげて笑った。「なにが生まれるんです?」
「歴史が」ダニエルは答えた。
ジュリーの笑みがゆっくりと消えていった。

クリスタルの夜

「クリスタルの夜」「エキストラ」「暗黒整数」「グローリー」「ワンの絨毯」プランク・ダイヴ」「伝播」を収録するグレッグ・イーガンの日本オリジナル短篇集.編・訳者あとがきにもあるとおり,「SFのお約束」が強く効いた短篇が多く,読んでてどっかしら懐かしい感じまでした.新しい酒と古い革袋というのかな? まあ頭から全部ちゃんと飲み込めたのかと言われると目をそらしがちになるわけですが.『ディアスポラ』の再読になるけど「ワンの絨毯」と,皮肉が効きまくったプランク・ダイヴ」が特に良かった.