杉山俊彦 『終わりは嫌だ』 (講談社)

終わりは嫌だ

終わりは嫌だ

この小説を読む前に覚えてほしいことが 4 つだけある。4 つも覚えられるか! と怒る人はこんなのは投げ捨てて、3 つ覚えれば充分な本を万引きしてほしい。

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『競馬の終わり』で第 10 回日本SF新人賞を受賞した作者による二作目の長編.前半は荒川河川敷で拾われた捨て子の ξ が体験した,バブル崩壊を挟む少年時代の思い出.後半は 21 世紀に飛んで,現代日本の政治経済を裏から牛耳る〈海〉という組織の話.メインは ξ の半生記だと思うのだけど,群像劇の体で描いた経済小説のようであり,社会科学 SF のようでもあり.といって深いところまで踏み込んでいる印象はあまりなく,キャラクター小説というのもまたちょっと違う.帯の「無意味経済社会を描く」「人を喰ったオリジナルな楽しさの物語」という惹句も嘘ではないのだけど,なんとも形容が難しい.変な小説だなあ,というのが率直な感想.しかしまあ『競馬の終わり』の作者が書いた,と言われるとなんだかとても納得してしまう,妙な味のある小説でありました.