日日日 『のばらセックス』 (講談社BOX)

のばらセックス (講談社BOX)

のばらセックス (講談社BOX)

『愛してなんかない。だけど、わたしはおまえを生んだのだ。おまえの血と肉はわたしからできてるのだ。だから、無様な真似はゆるさない』
『何? こんな酷いことしか言わないのに。愛してないっていうのに。おまえは、まだわたしをお母さんと呼ぶのか?』
『甘えるな。気持ち悪いな。まったく』
『馬鹿な子。わたしはもう、おまえを抱きしめることもできないのに』

Amazon CAPTCHA

世界に「男性」しか存在しなくなってから長い時が経った.2,000 年ぶりに産まれた「女性」,坂本のばら様は,世界中の崇拝を一身に受けていた.世界中に子どものいるのばら様の唯一の「娘」であり二番目の「女性」である坂本おちばは,性別を隠して坂本国際女学院に通っていた.
性的機能不全に陥った世界に現れた怪異である「女性」が果たす役割とは.『平安残酷物語』と同時刊行の本作は,『ビスケット・フランケンシュタイン』でセンス・オブ・ジェンダー賞を受賞したものの,「どこが評価されたのか、自分でも今ひとつ理解でき」なかったという作者が「そこ」に焦点を当てて描いた一冊.全編に渡って,精液と唾液と血液とに塗れたセックスが描かれる.……のだけど,後半に進むに連れてなんとなく爛れた感じが薄れていくのが不思議な感覚.おちば様が自分の性に自覚的になっていくにつれて,体温やにおいがだんだん感じられなくなっていくというか? 狙ってやっているのかな.断片的なエピソードをつないで話を広げていくのだけど,たたむのがうまくないところはあまり変わっていないかなあ.なんか,いろんな意味で気持ちの悪い作品(褒め言葉半分,文字どおりの意味があと半分)でした.