神林長平 『いま集合的無意識を、』 (ハヤカワ文庫JA)

いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫JA)

いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫JA)

返答までに数秒かかった。コーヒーでもいれてこようかと思いはじめるくらいの時間だ。それから画面に文字が表示され始めると、ぼくの世界は一変した、そのように感じられる、衝撃的な文字列が出た。
「ぼくは伊藤計劃だ」

いま集合的無意識を、

神林長平の短篇集.「戦闘妖精・雪風」の番外編「ぼくの、マシン」からはじまり,「切り落とし」「ウィスカー」「自・我・像」「かくも無数の悲鳴」といった,自我の存在と認識について語る短篇が続く.そして最後に,「伊藤計劃」を名乗る文字列との対話を通じて『虐殺器官』や『ハーモニー』の解釈を披露し,311 地震後の現代におけるフィクションの役割と,その先にある世界を考察する「いま集合的無意識を、」,という一連の流れが美しすぎる.ある意味ひじょうに突拍子もない表題作は,このひとでなければ書けない作品であることは間違いない.