大橋崇行 『妹がスーパー戦隊に就職しました』 (スマッシュ文庫)

妹がスーパー戦隊に就職しました (スマッシュ文庫)

妹がスーパー戦隊に就職しました (スマッシュ文庫)

僕の髪は、小学生の時点ですでに薄くなりはじめていた。
だから……ぼくはずっと、ヒーローになることを諦めていた。
だってそうだろう?
戦隊ヒーローのリーダーであるレッドが若ハゲだなんて、カッコ悪いじゃないか!!

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「私はこれでも……こんな体になっても、自分はシュタイナー・オレンジになってよかったって思っているの。おかしいでしょ? でも……自分で選んだ道なんだもの」

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株式会社人智戦隊シュタイナーとは,「世界革命」を目論む秘密結社薔薇十字団(ローゼンクロイツァー)と戦う戦隊ヒーローである.元ヒーローの両親を持つトオルとアオイの兄妹は,それぞれシュタイナー・レッドとシュタイナー・オレンジとして,いろんなものを抱えつつ戦いの日々を送るのだった.
5 人の戦隊の現在・過去・未来.スマッシュ文庫妹組の一冊.薄毛に悩みながらも戦うシュタイナー・レッド,トラウマを覆いかくして戦うシュタイナー・イエロー,両親からヒーローの素質を受け継ぐことが出来なかった事実にも負けないレッドの妹シュタイナー・オレンジ…….なぜヒーローという命がけの道を選んだのか,誰のためにヒーローになるのかを,正面から受け止めて描いている.各々のキャラクターの掘り下げを丁寧にやりながら,ドラマの進行も並行してしっかりしているのが良い.ヒーローものとしても,家族ものとしても非常にポイント高いところ.そのぶんページ数がかなり多くなっているのだけど,テキストもじゅうぶんに読みやすく苦にならない.終盤以降がちょっと駆け足気味というか,ラストも腰砕けになっていたのがもったいなかった.これだったら一冊にまとめず,上下巻にするかシリーズ化しても良かったのになあ.しかし「大人のための戦隊ヒーロー小説」というのは嘘ではない.良かったです.