月村了衛 『機龍警察 自爆条項』 (ハヤカワ・ミステリワールド)

機龍警察 自爆条項  (ハヤカワ・ミステリワールド)

機龍警察 自爆条項  (ハヤカワ・ミステリワールド)

何が独立の大義だよ──
大義などありはしない。テロリストに大義など。ライザの空虚な目は常にそう語っていたじゃないか。テロだけではない。すべての戦争に大義のないことを、姿は誰よりもよく知っている。

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軍用有人兵器・機甲兵装の密輸を操作していた警視庁特捜部は,北アイルランドのテロ組織,IRF(Irish Republican Force)によるイギリス高官殺害計画を察知する.さっそく捜査にとりかかる特捜部だったが,首相官邸から不可解な捜査中止命令がくだる.
北アイルランドにまつわる因縁が元テロリストのライザ・ガードナー警部を追い詰めてゆく.『機龍警察』(感想)の続編となる警察小説.北アイルランド問題は正直ぜんぜん知らなかったのでとりあえずひと通りぐぐってから*1読み進めました.機龍兵や特捜部といった設定の部分を根っこに活かしながら,かなりミステリ方面に力を入れている.期限の迫りつつある捜査に,IRA の後進となる IRF,警察内部でのどろどろした縄張り,権力意識,果ては中国の思惑が入り乱れる物語はテキストのテンポもよくスリル満点で手に汗握る.元女テロリストとテロで家族を失った女性警部補,そのそれぞれが持っている本という対比がすごく面白い.良い警察小説だと思いました.

*1:といっても Wikipedia プラスアルファ程度